★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 ☆ 第七巻拾弐回 小説「稀暮らし」 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 御機嫌よう。葡萄瓜でございます。 小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。 ○●○ 稀暮らし XQO 「大熊はあり、小熊はなし」 問わず語りにしては結構妙だ。別に答を求め ている訳でも無い様なので捨て置くとそのまま うんうん唸っている。唸り出すとこの男は鬱陶 しい置物にしかならないのでとりあえず閃きで 訊いておく。 「金でもなければ銀でもない?」 「増してや竹である筈も無い」 勘が当たった様である。ああ、そう言う事で 最近ごそごそしてたのか。 「おたまじゃくしじゃどうかいな」 「興褪めするし足りはせぬ」 道楽と言うものはまったく以って面倒臭い。 さりとて合理的にすればそれはそれで気持ちが 寒い。地続きとは言え手水屋から家遣いの手水 柄杓を拝借する訳には行くまいし。 思案の挙句深く一息吐いて、さてとと立ち上 がる。 「ついでは?どうせあるんでしょ?」 道楽者を同居人に選ぶとどうも荷物が嵩張っ ていけない。先住者のやや捨て鉢になっていた 背中を散々見てきたのだからしっかり学習して いる筈なのだが贔屓の引き倒しはそう言う分別 に目隠しをする作用がある様だ。 良くしたものであの道楽者、作法には凝るが 品の名声には凝らない。だから実さえ役立てば 良いもので揃える事が出来るし、後生大事に抱 え込むばかりと言う事も無い。自分の気持ちに 沿わない品なら仮令それが世間が大枚はたく様 な品であってもあっさり人にくれてやっている。 まあそこはそれ誰彼無しにくれてやっている訳 ではなくそれなりの人間はきちんと選ばれてい るので逸品が無駄に雲隠れすると言う事は無い。 むしろ隠れた品が世間に出てきちんと評される 事がある程だ。 帳尻が合っているのだから笑うべきなんだろ うか。でもいざその立場になると恐らく笑って ばかりもいられない方もいるのでは無いかと思 う。 道楽者が日々の暮らしの算盤を弾いている訳 では無い、といえばお判り戴けるだろう。生き る為には一応世間の算盤に従う必要はあるのだ から。 その反面愉快と言えばこれ程愉快な暮らしも 無い。人生丸々道楽と考えてしまえば些細な所 にも喜びを見出せると言うもので、粥に添える 塩の一つまみ二つまみの旨さ加減の違いがどう のとどうでも良い事で話の花を咲かせる事も出 来る。 貧乏も楽しんでしまえば道楽の内だとあの男 は背中で語り続けている。そう言う男に惚れて しまっているのだからこちらとしてはどうしよ うもない。札びらを数える事に飽いた丁度その 時に彼奴と出会ったのも拙かった。悪い虫に口 実を与えて貪らせた様なものであるし。もっと もその悪い虫が心潤す蜜を分泌しているのだか ら帳尻は合うのかも知れない。 今更札びら数えに戻ろうなどとは思わないし 思えない。指先と心が渇いて強張るだけの毎日 に誰が好んで戻りたいものか。それよりは予算 内で道楽を一緒に楽しむ工面をする方が余程張 り合いがあるってものだ。 さりとて悩みが全く無い訳では無い。例えば 自分達にとって未知の食材である大根菜や人参 菜をどうやって美味しく食べるかと言う程度の 悩みはある。目新しく量があるので惹かれる食 材なのだが変な調理で無駄にしてしまっては本 末転倒。人様の調理方法をそのまま真似ても環 境の差異で出来上がりに違いが生じる事は明々 白々。 で、意外な所で道楽者の知恵がそう言う際に 役に立つ。本人曰く只の応用だと言うが、そう 言う畑違いの応用が出来る事自体先ず稀有な事 だろう。世間に名を知られる一端の道楽者が道 楽で身を成している様に。 その男が珍しく専用の道具を欲しているのだ から財布の紐を緩めてやっても良かろう。勿論 御用達の硬貨で総てが購えるあの店で。あの店 の品の方が彼奴には使い勝手が良いと言う事で もあるし。もしも炭が多く入荷していたら炭を 使って枯山水モドキの盆景を創ってみるのも一 興かも知れない。黒一色の風景の中に色合いを 見出すのもまた面白いし。 買い物を済ませて帰ると道楽者は何やら反古 紙に書き付けていた。どれどれ。 「紙一枚で暮らしは軽重」 じゃあ上の句をつけようと筆を引っ手繰って 少し頭を捻る。 「月と陽を頼る暮らしもまた楽し」 小指を握られたという事は月の下で枕を探し て過ごそう、と。久々だし良いか。 【了】 ○●○ さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて 戴きます。 ここで二つ喧伝を。 筆者が後援しておりますコミックカフェ・CAFE 801(カフェハチマルイチ)におきまして、6月 12日より7月11日までコラボレーション企画 『Lucian Bee's Cafe』が開催されております。 また本日25日より7月4日まで、男性にも店内が 開放されるとの事でございます。 詳細は店舗公式サイトにて御確認下さい。 ******* CAFE801(カフェハチマルイチ) 〒170-0013 東京都豊島区東池袋3-10-6 加藤第6ビル2階 http://cafe801.org/ ******* また6月27日の日曜日に東京都立産業貿易セン ター台東館7階にて開催されるオンリーイベン ト「ショタスクラッチ12」に於いて、『ショタ コンのゆりかご』を下記サークル様に委託させ て戴いております。 D09 秘本衆道会 様 / 衆道士ペドフェチ様主催 『ショタコンのゆりかご』は無償頒布品でござ います。よろしく御高覧下さいませ。 では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。 ======================= 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 第七巻拾弐回 2010.6.25発行 文責:葡萄瓜XQO website:『仇花の記憶』 http://kamakura.cool.ne.jp/xqo/ mail:xqo_gm@yahoo.co.jp このメールマガジンは melma! http://www.melma.com/backnumber_90840/ Mailux http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533 おしらせメールサービス http://www.marine.ne.jp/mm/user.asp?id=75297 まぐまぐ http://www.mag2.com/m/0000270330.html E-Magazine http://www.emaga.com/info/adabana.html のシステムを利用して発行させて戴いています。 ご意見ご質問等はWebサイトBBS http://otd11.jbbs.livedoor.jp/adabana/bbs_tree にて承ります。 又連動BLOG「ショタやおい雑記」も運営しております。 http://xqosy.seesaa.net/ こちらも宜しくお願い致します。 バックナンバーはサイト内にて公開しております。 再配信ご希望の場合はお手数ですがメール若しくは BBSにてご用命戴ければ幸いです。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆