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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第八巻拾四回  小説「夏還り」
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**第七巻弐拾号より横幅を
         若干拡げて配信しております**

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3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震(東北
大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い申し
上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出
来ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の
潤いに繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

   夏還り
               XQO
                                
 「随分と今年は涼しげだね」
  「科学の力に頼りきれないと言うご託宣が出たか
らね。自己防衛だよ」
  「ぢゃあ、非科学的な手段でもう少しす」
  「それ以上続けるなら和尚を呼ぶよ?」
  姿がゆるゆる消えて行くのと平行していじけた様
な舌打ちが聞こえてきたがお前が悪いと心の中で聞
こえよがしにツッコンでおく。大体和尚の経でも休
憩を取らないだろうがお前はよ。
  「ナンダイナンダイ朝っぱらから暑いねぇ」
  「和尚、いたの?」
  「さっきから居たわさ」
  「お勤めは?」
  「この散歩が終ったら早速に」
  アロハ着て西瓜下げて何が散歩だよ、と思いつつ
檀家の気配りで麦茶を淹れてやる。友人として他の
大麦飲料を注いでやるにはまだ日が高い。
  「ねえ和尚」
  「ン?」
  「あいつを暫く寝かしつけるような経、ほんとに
ないの?」
  「あればこの世から心霊写真の類は一切無くなる
なァ」
  額の汗を手拭いで拭いながらさらりと言う。
  「そもそも和俊は未練でこっちに残ってるんじゃ
ないからなァ」
  「出戻りなんだ?」
  「と言うか、里帰りだわな」
  「俺の傍が?」
  「お守のつもりもあるだろうし、お前さん和俊に
触れるだろ?」
  「ああ、それがあるか」
  「血の繋がりがあっても境が出来たら、そりゃ気
持ち的にしんどかろうよ」
  心当たりがあり過ぎる話だ。そう言う意味で言え
ば俺の家族と言えるのは和俊とそのご両親と言う事
になる。
  「和尚はさ、面倒臭くない?」
  「何が?」
  「俺達に長年振り回されてさ」
  「何かと思えば」
  鼻先で笑って返すなよ、友人だけど俺一応檀家だ
ぞ?
  「慣れだ、慣れ。こう言うものは持ち回りのもの
だしな」
  「そんなものなん?」
  「人生経験と思えばかなり貴重だしなァ」
  そして一息に麦茶を干す。
  「それに、半世紀はご無沙汰になると思ってた憎
たらしい顔を相変わらず拝む事が出来るんだ。これ
は素直に嬉しいやな」
  「和尚、言っとくけどあれは俺のものだからな?」
  友人を恋敵にする趣味は無い。断じて無い。
  「承知しとるわさ。和俊をああいう奴に仕立てた
のは佳史にしか出来ない手柄だしな。愚僧にゃ無理
だ」
  しみじみ言われてしまった。
  「さて、と。お勤めの準備をしておくかね」
  軽く伸びをするその背中に向かって気取られない
様合掌しておく。和俊と意思疎通出来る様になるま
での間、この友人は連日僧形でうちに来ては仏壇と
向き合ってくれていた。
  思えば和尚にはこう言う貧乏くじばかり引かせて
いる気がする。甘え易い幼馴染であるのを良い事に
俺と和俊の関係が変な方向に漏洩しない様に世間と
の調整を頼んだり密会場所を紹介して貰ったりとか。
やんちゃの為の世知とは無縁な人に良くぞここまで
させたものだと我ながら呆れてしまう。そこまでし
て貰いながらも俺が和尚を惚れた腫れたの相手とし
て認識した事は一瞬たりとて無い。我ながら残念な
話だけど、そう言う相手は和俊しかいない。
  そして残念な話がもう一つ。
  俺達の心情が何一つ変わらないと言うにも拘らず、
こうなってから向こう和俊は和尚と同席する事が出
来なくなった。それは和尚にも和俊にもどうしよう
もない法則と言う奴なのだろう。
  「その西瓜、多分和俊には大丈夫だろうけどなん
かあったら言いなさいよ。八百芳さんに頼んどくか
ら」
  「毎度悪いね」
  まったく良い友人に恵まれたもんだ。
  そして井戸に西瓜を浸けて二時間。和俊がそろそ
ろ寄って来る。
  「ったく、好き勝手言ってくれるよ二人とも」
  「まあまあ。塩、かける?」
  「いらね」
  深呼吸した半透明の腕が西瓜を持ってやがてガブ
リ。夏の匂いが庭に広がる。
                  【了】

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きま
す。次号配信まで、御機嫌宜しゅう。

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以下6月10日配信号より継続の事務連絡にて。

配信スタンドが5箇所から4箇所となりました。
これは1箇所の運営形状変更に伴うものです。

また、website『仇花の記憶』が移転致しました。
これはCOOLサーバ運営終了に伴うものです。

以上、奥付の通りよろしくお願い致します。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第八巻拾四回 2011.7.25発行

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