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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第九巻八回  小説「紛れる余白」
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**第七巻弐拾号より横幅を
         若干拡げて配信しております**

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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に
出来ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の
潤いに繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

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   紛れる余白
                XQO

 「少し厚くなった?」
  「気持ち程度な。一律そうなってるぞ?」
  「そうなんだ」
  「普通に現状維持と言う事らしいけどな」
  「賢明な判断かもね」
  自分のパートナーの社会的な価値を測ってどうこう
と言う悪趣味は未だに持ち合わせないが就労環境が違
うせいなのか年度が変わる度に奇妙な遊びに興じてい
る。いや、学習の延長線と言うべきかな?
  「現状維持と言う割には随分遊び心が入ってない?」
  「そりゃあの人が窓口だから」
  「よく通ったよね」
  「あの人だからなー。そのお陰でこっちも遊ばせて
貰ってるけど」
  「そうね。僕も余録にあずかってるし」
  無邪気に笑ってくれちゃってまぁ…で、その表情で
全て報われたと感じ入る単細胞な俺もなんだかなぁ、
と心の隅で苦笑する。
  「一応言っとくが」
  「うん」
  「最大限の努力はしたぞ?」
  「その辺を判らない節穴まなこだと思う?」
  「いや、思わない」
  「状況に便乗した訳でもないんだけどさ。自由度が
増えたから」
  完成品を撫で回しつつ静かに言う。
  うん。知ってる。こいつは自分を飾る為の仕掛けに
見栄を張る奴じゃない。必然と遊び心が線で繋がらな
ければ動く奴じゃない。
  そして俺はこいつに先の在り処を提示した人も知っ
ている。俺の恩人の一人でもあるし。
  「今日の昼持って行ったらさ、いい仕事だって褒め
てたよ」
  「天気予報が心配だなオイ」
  「…言ってろ、お馬鹿」
  …あのさ、溜息を吐こうって時にわざわざ名刺ごと
きをハンカチの上に退避させるのは製作者として非常
に照れ臭いんでもう少しぞんざいな風に善処してくれ
るか?
  
  僕と彼とは元同僚でありとりあえず現在同居人でも
ある。そして会社から離れた彼は今何をしているかと
言うと、この数年来元の職場の名刺作成も一気に引き
受けている印刷屋をしていたりする。言っては何だが
そこそこ知名度はあるという感じだ。
  入社して一年経つかどうかと言う折に折角実家に在
る活版の機材を埃まみれにするのも忍びない、と平凡
な日々をぶった切って決断した彼に当時の僕等の上司
がなんやかんやとまず私用の印刷物を発注したのがそ
もそものきっかけ。運は何処に転がっているか判らな
いものだ。もっとも転がっているものを引っ張る能力
も必要だろうけど。
  で、彼がそう行動を起こしたら相方としては机を並
べて仕事をしてみたくなるもの。確かに彼一人ででも
デジタルも活版も扱いきれる。そう言う才能の持ち主
だと言うのは贔屓目抜きで熟知している。だからこそ
横で手伝いたくなったのだけど、即座に却下された。
  『身近な外部モニターが一人減るのは惜しい』と言
うとりあえずの理由で。
  でも、色々乗り越えた今だからあの時の彼の真意が
判る様になった。だから今は色々待てる。緩和させる
役が居ないと疲れる日々もあると言う事だし。
  僕が惚れたのは言うべき事は自分の仕事の成果で示
す男だ。その点さえ忘れなければ待ち時間はどうにで
もなる。今回だってきちんとした仕事で自分の今を魅
せてくれた。それで充分じゃないか。そう言う風に納
得出来る様になった。
  だからこちらも過剰に甘えないし、特別扱いを見込
んだオーダーは出さない。職人技を見込んだ無理の少
しは言ってみるけど。
  
  「ああ、これ、サービスな」
  「何?」
  「世間の一部で流行ってたみたいなんで試しに作っ
てみた」
  差し出されたのは短冊状のミニ名刺。流行りものに
手を出す様な奴じゃないと思い込んでいただけに一寸
意外。仕上げ方はそれなりに変えてあって個性的だけ
ど。
  「ま、悪用はしないでしょ」
  「そういう意味ではね」
  そう言う心配をするんなら最初から渡すなよ、と苦
笑しつつ現物を検分する。って、あのなぁ…。
  「お名前シールかよ、ったく」
  「茶目っ気茶目っ気」
  「いや、悪意だろ」
  だからお仕置きとして耳を少しきつく噛んでやる。
ミニ名刺百枚分の照れ臭さの代償として。    
                    【了】

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きま
す。次号配信まで、御機嫌宜しゅう。

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以下喧伝です。

ニコニコ生放送「BL夜伽ラヂオ」
http://com.nicovideo.jp/community/co1391827
2012年1月5日(木)21時(午後9時)より開始。
毎週木曜日21時開始の30分から1時間の枠で毎週一人
の作家さんについてあれこれ思い出語りをさせて戴き
ます。
通年で50人を取り上げる予定です。
詳細は上記ニコニコミュニティまで。
出演:黒猫ゆーすけ+ぶどううり・くすこ(筆者)
3月度以降は暫しお休みを戴いておりましたが、4月度
より再開致しました。過去放送は記録動画として再録
させて戴いております。
何かのお肴にして戴ければ幸いです。

お時間があれば、よろしくお願い致します。

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以下2011年6月10日配信号より継続の事務連絡にて。

配信スタンドが5箇所から4箇所となりました。
これは1箇所の運営形状変更に伴うものです。

また、website『仇花の記憶』が移転致しました。
これはCOOLサーバ運営終了に伴うものです。

以上、奥付の通りよろしくお願い致します。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第九巻八回 2012.4.25発行

文責:葡萄瓜XQO(ぶどううり・くすこ)
http://xqo.ooh.jp/mag/
mail:xqo_gm@yahoo.co.jp
連動BLOG「ショタやおい雑記」
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このメールマガジンは
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http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533

おしらせメールサービス
http://www.marine.ne.jp/mm/user.asp?id=75297

まぐまぐ
http://www.mag2.com/m/0000270330.html

のシステムを利用して発行させて戴いています。

ご意見ご質問等は上掲メール宛、若しくはサイト内
設置メールフォームよりよろしくお願い致します。
http://xqo.ooh.jp/mag/form/

バックナンバーはサイト内及び各配信スタンドにて
公開しております。
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