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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第拾参巻弐回  小説「遠慮の塊」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤いに
繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

〇●○

   遠慮の塊
                XQO
                                
 お互いはじめてだと言う事を言い訳にして全てをテ
ンプレ通りにしてしまおうとしたのがそもそもいけな
かったのかも知れない。
  何か不安があってもそれなりに格好がつく状態と言
うのは実に有り難い。無知を素直に告白できない年頃
なら尚更の事。
  そして俺だけじゃなく実は令二もそう言う状態だっ
たと知ったのが卒業と同時に何となく関係が途切れて
半年経った後のついこの間。
  お陰様で今、お互いに旧知の仲だと言うのに共有で
きてない情報が九割九分と言うあほらしい状態に陥っ
ている所。こう言う状態でも何とはなしに波長が合う
らしいと言う勘だけ働いているのが実に始末が悪い。
  こう言う状態からすべてをすっ飛ばしてなし崩しに
もう一度始められたらどれだけ楽かと思う。でもそう
できないのは、最初で躓いてしまった事をお互いに判
ってしまっているから。
  
  彼の事を名前で呼ぼうと一瞬たりとも考えなかった
のは愛情云々ではなく、ただ切り替えが面倒だったか
ら。それなりの事は精魂尽くしてしてきたと言う自負
があるので、親近感の演出の為に名前で呼ばずとも名
字呼びそのままで良いだろうと言う根拠のない自信が
あった。
  ただ、前回の失敗を顧みるとその一点も遠因の一つ
に思えてしまったので今回は歩み寄ろうと思い直した
のだけど…なんだこの異様に高い心理的ハードルは。
  各種書類で彼の名前は見慣れているので後は認識で
きる程度の声量で発声すれば良いと言うだけの問題だ。
だのに何故それがあっさり出てこない。
  我ながら重症だと思うのは練習の為に呟いている時
点で耳の温度が上がっているのが自覚できる事。自己
設定の崩壊に正直戸惑いを隠す事ができない。
 こんな面倒な思いをするなら執着しなくても良かろ
うに、とは我ながら思う。別の心当たりが全く無い訳
ではないし、彼にもそう言う類の追っかけが居ると把
握してもいる。
  それでも欲しくなっているのだから仕方がない。面
倒なのは承知の上。彼是思い悩むのは諦め切れないか
ら諦める為の言い訳を捻り出そうと悪足掻きをしてい
るからに過ぎない。
  ただし、突っ走って同じ失敗を繰り返すのには懲り
たのでその辺については少し考える。限度はあるだろ
うけど。
  
  もう一度手順を踏み直して、知人から親しい友人へ
距離感を変換しようと試みる。改めて意識しながらや
ってみると思っていた以上に面倒臭い手続きだと言う
のが判る。いや、違うか。下心付きでこの手順を踏ん
でいるから自意識過剰になるのか。黒歴史なんてそう
そう好んで繰り返すもんじゃないな。
  気持ちを捨ててしまえばかなり楽になるのは理解し
ている。でもそれだとまたいつか離れる時が来る。そ
れが嫌だから今こうして手探りをしている訳で。そう
言う反復が出来る根気を持てる様になったと言うのが
多分進化らしい進化かもな。
  一度手の中から失くしてしまったからこそ、会話の
必要がない熱の有難味がしみじみ判る。この熱があっ
たからあの頃は間を持て余す暇を感じずにいられたの
か。熱自体を持て余して時々火傷しそうになったけど。
  ……いっそ一度きちんと火傷したら今度こそ感覚が
掴めるのかもね。亀の甲より何とやらでそう言う時の
対処方法をあの頃に比べたら多少は会得しているし。
  そもそもなんでこんな状況に陥っているのかと言え
ば、新生活を始めると同時に燻っていた心残りをきち
んと整理したいと思い立ったから。そのつもりだった
のがいざ対面してみれば焼け木杭に火がついてるんだ
から世話ぁない。蓋を開ければ令二も同じ状況らしく、
なんて業が深いんだろうと思う。
  通過儀礼?そんな綺麗な言葉でまとまるような気持
じゃないと思う。
  
  で、結局、元の鞘に納まっている。
  正確に言うと微妙な差異はあるのだけど、とりあえ
ずじゃれ合っていると言う感じ。やり直していると言
うのもまた一寸違うかな。
  二人の間にある遠慮の塊がいつか消えれば新展開は
あるかも知れない。ただそのタイミングがいつかと言
うのは、正直判らない。
  ただ不思議な事に、もう焦らないと言う自信だけは
何故かある。どこまで信用して良いのか判らない自信
だけど、無いよりはきっとマシな筈だ。
  さて、とりあえず日々を重ねてみようか。どんな答
えでも、多分今度は穏やかに共有できる筈だ。        
                   【了】

〇●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きます。
では次号初回配信まで、御機嫌宜しゅう。

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BoysLoveみそひともじ朗詠 
http://com.nicovideo.jp/community/co1421231
定例配信:毎月第一月曜日・21:00(午後9時)頃〜

雑談枠:「合切袋のプチ整理」
毎月第三月曜日・21:00(午後9時)頃〜

お時間がありましたらよろしくお付き合いください。

2016年1月より『BL夜伽ラヂオ』第四期を配信致します。

BL作家紹介放送「BL夜伽ラヂオ」
基本的に毎月第二第四水曜日・午後9時(21:00)頃開始。
概ね30分ひと枠配信
http://com.nicovideo.jp/community/co1391827
第2回は27日(第四水曜日)配信。お題は「紀伊カンナ」。

併せてご愛顧戴ければ幸いです。

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以下、商業媒体告知です。
2015年8月20日に玄光社から刊行されました
『はじめての人のためのBLガイド』【表紙:宝井理人】
http://www.genkosha.co.jp/gmook/?p=8721 
http://www.amazon.co.jp/dp/4768306462/  
の企画・「私が選ぶ○○BLベスト5」の選者の一人と
して参加させて戴きました。
ご高覧戴けましたら幸いです。

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商業媒体告知、2件目です。
2015年11月25日より集英社より電子書籍配信されている
ブリンクコミックスデジタル・ことり野デス子先生
「フダンシ革命」第2巻巻末企画にて、ことり野先生と
腐男子として対談させて戴いております。
http://www.amazon.co.jp/dp/B0177H72ZO/
http://books.rakuten.co.jp/rk/42718e40b81938e788ce1e4a32558366/
ご高覧戴けましたら幸いです。

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商業媒体告知、3件目です。
宙出版・刊『このBLがやばい! 2016年度版』(2015年12月12日刊) 
http://www.amazon.co.jp/dp/4776796627/ 
にて、当方はBL通の末席で「あなたのBL BEST5」(コミック
・小説)選者で参加しました。
更に「2014〜2015 BLニュースこの1年!!」(BL重大ニュ〜ス!!)
を書かせて戴き、加えてランキング発表後のBL座談会で
評論サークル・ガール社のユーホさん、BLの取り扱いもある
インターネットカフェ・和style.cafe AKIBA店スタッ腐さんと
鼎談させて戴いております。御高覧ください。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第拾参巻弐回 2016.1.25発行

文責:葡萄瓜XQO(ぶどううり・くすこ)
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のシステムを利用して発行させて戴いています。

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