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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第九巻弐拾四回  小説「Cの連鎖」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤い
に繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回年内最終回にして第九巻締め括りの配信回、
お楽しみ戴ければ幸いです。

〇●○

    Cの連鎖
                   XQO
                              
 生まれついた年代のせいかどうかは判らないけど、
僕の父親どもの実家は両方が両方とも正月用の備蓄食
料にレトルトカレーを常備するのが常識になっている。
これが単一メーカーの品に統一されていると言う状況
だったら見事なネタに昇華されるんだけど生憎とそう
ではない。
  まあ、流石にそこまで息ぴったりな男夫婦なんてい
ないだろう。僕と司朗だって息の合い具合は精々七割
と言った所。まあ、その辺は逆に今の時代背景が云々
されるのかも知れない。
  あの二人、カレーの好みが似てそうでかなり違うん
だよなぁ…。今までどうやって折り合いを付けてきた
のか、その辺を将来の参考にきちんと聞いて置きたい
所だ。彼等の現状から想像すると僕等の味覚も何時か
は変わる可能性があるんだろうし。
  
  理史の父君と父上に挨拶するのは未だに緊張する。
二人ともそれなりの人だからと言うのもあるけど、そ
れより重要なのは同じ性だからと言う部分。役割分担
どうこうで分ける事が出来ない部分。
  ぼくだって男のはしくれなんでそこの所の複雑さは
多分判る。一言で言えばバランス感覚なんだけど、正
直難しい。目に見えたり言語化出来る差を作り出し難
い関係だから。
  そう言う一面を乗り越えて野郎三人の家族を今まで
維持してきたのは素直に凄いと思う。
  野郎同士だから以心伝心出来るなんてのは実に脳天
気な思い込みってもので、野郎同士だから以心伝心出
来ない部分の方が遥かに多い。舌の加減なんてその最
たるものじゃないだろうか。
  二人に会うのは良い。用意してくれるお土産を持ち
帰るのも良い。ただ、そのお土産のカレーをバランス
良く消費するのが実はさり気なく難しい。ぼくの味覚
はどうも父君寄りであって父上の好みはまあ大丈夫だ
けど強いては食べないと言う範疇に入る。そこが結構
問題だ。レトルトカレーのアレンジ料理の数は無限な
様でいてそうじゃないし。
  つーか、正月にカレーというのは本来おせちや雑煮
と合わせ技で台所に休息を与える為の手段じゃなかっ
たのかなどと些細な八つ当たりもしてみたくなる。答
えは返って来ないだろうけど。
  まあ、いいや。今夜はとりあえずカレーにしよう。
せめて一月の間には消費しきって置かないと。
  
  「なあ」
  「んー?」
  「司朗くんに持たせたカレー、何処の奴だ?」
  「何時も通り全種類だけど?」
  「……律儀だな」
  「彼の好みを既に把握はしてるんだけどね」
  「をい」
  「二人で手塩にかけた息子を掻っ攫ってゆくんだか
ら、せめて試練のひとつはあって良いかってね」
  「オレでさえ手加減してるってのにお前……」
  「理は甘過ぎ。同じ役割だから手加減してる?」
  「あー、まあ……否定はしない」
  「だったら俺がその甘さを中和させないとね。そう
した方が新婚生活に甘さが出るし」
  「そんなもんもんかね」
  「それを教えてくれたのは理の母君だけど、何か?」
  「そうか…いや、良い」
  こう言うのも母の連鎖と言う事になるんだろうか。
我が事ながら難儀な事だ。それともこれは明史の隠れ
た資質で、おふくろがそれを開花させたんだろうか。
だとしたらそれもまた厄介な事だ。司朗くんもやがて
はそれを受け継いでゆくのだろうか。…理史、強く生
きろよ。
  
  食卓に並ぶひと味変わった正月料理に複雑な気持ち
を抱きつつ、食卓を挟んで向かい合う。司朗がうちの
父親どもに馴染んでいるのは嬉しいんだけど、何とい
うかその度に僕の肩身がじわじわ狭くなると言うのは
気のせいなんだろうか?まあ、そのお陰で二人で過ご
す時間が長くなると言うのならそれはそれで幸せだけ
ど。
  「ああ、そうだ」
  「何?」
  「誕生日おめでとう。そしてありがとう」
  面食らっていると言葉が追いかけてくる。
  「理史が居てくれるお陰で、ぼくの人生も楽しくな
ってるから」
  そうか、ならいいか。それなら色々大丈夫だろう、
きっと。    
                    【了】

〇●○

此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きます。
本年度はご愛顧戴き誠に有難う御座いました。
明年もご愛顧戴けますれば幸いです。
では年明け・第拾巻壱号の配信まで、御機嫌宜しゅう。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第九巻弐拾四回 2012.12.25発行

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